看護師の試用期間で気をつけたい5つの落とし穴|条件確認と早期退職を防ぐ
内定が出て、退職手続きも終えて、新しい職場での初日。ほっとしたのも束の間、雇用契約書に「試用期間3か月」と書かれているのを見て、ふと不安になる——そんな声をよく聞きます。
「この3か月で切られることはあるのだろうか」「合わないと思ったら辞めていいのだろうか」「給与はいつから本来の額になるのだろうか」。試用期間は、転職活動のなかでいちばん説明が少ないまま通過してしまう期間かもしれません。
試用期間そのものは、珍しい制度ではありません。問題になるのは、制度を知らないまま入職し、あとから「聞いていない」となるケースです。この記事では、看護師の転職でつまずきやすい5つの落とし穴と、その回避法を整理します。
※制度の運用や条件は医療機関ごとに異なります。実際の取り扱いは、就業規則および労働条件通知書の記載が優先されます。
そもそも試用期間とは何か
試用期間とは、入職後の一定期間を「適性を見る期間」として位置づけるものです。期間の長さは1〜6か月程度と幅がありますが、3か月または6か月に設定する医療機関が多く見られます。
ここで最初に押さえておきたいのは、試用期間中でも労働契約はすでに成立しているという点です。裁判例では、試用期間付きの雇用は「解約権が留保された労働契約」と整理されています。つまり「まだ正式な採用ではないお試し期間」ではなく、雇用は始まっているという理解が出発点になります。
そのため、次のことが原則として当てはまります。
- 労働基準法・労働契約法は試用期間中も適用される
- 社会保険・雇用保険は、加入要件を満たせば入職時から加入する
- 有給休暇の付与に必要な勤続期間には、試用期間も通算される
- 一方的に辞めさせる(本採用を拒否する)には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要とされる
「試用期間中だから何でも会社の自由」ではありません。ただし、通常の解雇よりは広い範囲で解約が認められる余地があるとされており、まったく同じでもない、という中間的な位置づけです。
失敗1:本採用後と条件が違うことを、入職後に知る
もっとも多いのが、給与や手当の扱いをめぐるすれ違いです。試用期間中の賃金を本採用後より低く設定すること自体は、労働条件通知書に明示されていれば可能とされています(最低賃金を下回ることはできません)。
看護師の求人で差が出やすいのは、基本給よりもむしろ手当と夜勤の扱いです。
- 夜勤に入るのは試用期間終了後、という運用(=夜勤手当が付かない期間がある)
- 資格手当・住宅手当の支給開始が本採用後になっている
- 賞与の算定期間から試用期間が除かれている
回避法:内定承諾の前に、労働条件通知書で「試用期間の有無・長さ・その間の労働条件」の欄を必ず確認します。求人票と契約書で金額が違う場合、優先されるのは契約書です。転職サイトを利用しているなら、聞きにくい金額の確認は担当者経由で依頼するほうが角が立ちません。
失敗2:「試用期間中なら簡単に辞められる」と思い込む
「合わなければすぐ辞めればいい」と考えて入職し、いざ退職を申し出たら引き止められた、というケースです。
期間の定めのない雇用契約であれば、民法上は退職の申し出から2週間の経過で契約は終了します。ただし実務では、就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」と定められていることがほとんどで、病棟の勤務表が組まれている以上、現場の調整は必要になります。
回避法:辞める前提で入職しない、というのが大前提です。そのうえで、万一のときに備えて就業規則の退職に関する条項の場所だけは把握しておくと落ち着いて動けます。短期間で辞めた事実は職務経歴書に残るため、次の転職での説明の負担も考慮に入れて判断してください。
失敗3:本採用拒否のリスクを、過大にも過小にも見積もる
「試用期間で切られたらどうしよう」と過度に不安になる方がいる一方で、「試用期間中の遅刻や欠勤は大目に見てもらえる」と考える方もいます。どちらも実態からはずれています。
本採用の拒否は、法的には解雇にあたります。前述のとおり、通常の解雇よりは広く認められる余地があるとされるものの、無条件ではありません。実際に問題になりやすいのは、能力そのものよりも勤怠・報告・安全に関わる姿勢です。
- 連絡なしの遅刻・欠勤が続く
- インシデントの報告を上げない、隠す
- 指導内容が繰り返し反映されない
回避法:新しい職場では、わからないことを聞ける関係をつくることが最優先です。とくにインシデントや不明点は、その日のうちに上げる。この一点だけでも評価の受け取られ方は変わります。
失敗4:教育体制の確認を、入職後に回す
未経験の診療科や、病院からクリニック・施設への転職では、試用期間がそのまま「独り立ちまでの期間」と重なります。ここで教育体制の想定がずれると、試用期間中にもっとも消耗します。
現場でよくあるずれは次のようなものです。
| 事前の想定 | 実際に起きがちなこと |
|---|---|
| プリセプターが付く | 人員の都合で日替わりの指導者になる |
| 3か月かけて独り立ち | 2週目から夜勤・オンコールに入る |
| 手技はマニュアルで学べる | 手順が口伝で、施設ごとの運用差が大きい |
| 前職の経験がそのまま活きる | 記録システムや物品の名称から覚え直し |
回避法:面接や職場見学の段階で、「入職後1か月のスケジュール」を具体的に聞くことです。「教育体制は整っていますか」という聞き方だと、ほぼ「整っています」と返ってきます。独り立ちの時期・指導担当の付き方・夜勤開始の目安の3点を、時期で確認するほうが実態が見えます。
失敗5:合わないと感じたときに、一人で抱え込む
入職から数週間で「思っていた職場と違う」と感じること自体は、珍しいことではありません。問題は、その違和感を誰にも共有しないまま、退職か我慢かの二択で考えてしまうことです。
実際には、その中間に選択肢があることが少なくありません。
- 配属や担当の変更を相談する
- 独り立ちの時期を後ろ倒しにしてもらう
- 夜勤の開始時期だけ延ばしてもらう
- 転職サイト経由なら、担当者に現状を共有して施設側と調整してもらう
回避法:違和感は「業務量」「人間関係」「条件のずれ」のどれなのかを、まず自分で分けて書き出します。そのうえで、条件のずれであれば施設側に、業務量であれば上長に、と相談先を変えるほうが解決に近づきます。心身の不調が出ている場合は、我慢の継続を判断基準にしないでください。
落とし穴を防ぐ順番
やることを時期ごとに並べると、次のようになります。
入職前(内定承諾の前)
- 労働条件通知書で試用期間の長さと、その間の条件を確認する
- 求人票との差があれば、承諾前に書面で確認する
- 入職後1か月のスケジュール(独り立ち・夜勤開始)を聞く
入職後1か月まで 4. 就業規則の置き場所と、退職・休暇の条項を把握する 5. 不明点とインシデントはその日のうちに上げる習慣をつくる
入職後1〜3か月 6. 違和感が出たら、種類を分けて相談先を選ぶ 7. 本採用の時期と、その後の条件変更(手当・夜勤)を改めて確認する
試用期間は「試されている期間」であると同時に、こちらが職場を確かめる期間でもあります。確認を遠慮しないことが、結果としてお互いのミスマッチを減らします。
よくある質問
Q. 試用期間が6か月というのは長すぎませんか? A. 6か月に設定する医療機関もあり、それ自体が直ちに問題とはいえません。ただし合理的な理由なく延長を繰り返す運用は望ましくないとされています。延長の可能性の有無を、入職前に確認しておくと安心です。
Q. 試用期間中に体調を崩して休んだら、本採用に影響しますか? A. 一度の休みが直ちに影響するとは限りません。連絡と診断書などの手続きを踏むことが大切です。療養が長引きそうな場合は、早めに上長と相談してください。
Q. 試用期間中に前職の離職票が届きました。手続きは必要ですか? A. 転職先で雇用保険に加入していれば、失業給付の手続きは不要です。離職票は保管し、扱いに迷う場合は勤務先の担当部署に確認しましょう。
参考・出典
- 労働基準法(第20条・第21条 解雇の予告、第39条 年次有給休暇)
- 労働契約法(第16条 解雇)
- 民法(第627条 期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
- 厚生労働省 — 労働条件の明示に関するルール
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供です。個別の労働条件については、就業規則および労働条件通知書・雇用契約書の内容が優先されます。判断に迷う場合は、勤務先の担当部署や労働局の相談窓口にご確認ください。
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よくある質問
試用期間中は給与が低くなることがありますか?
労働条件通知書に明示されていれば、本採用後より低く設定されることはあります。ただし最低賃金は下回れません。入職前に金額と期間を確認しましょう。
試用期間中でも有給休暇はもらえますか?
労働基準法では入職から6か月継続して勤務し、出勤率8割以上で付与されます。試用期間もこの勤続期間に通算されるのが原則です。
試用期間中なら自由に退職できますか?
期間の定めのない契約なら、法律上は退職の申し出から2週間で終了できます。ただし就業規則で1か月前とされることが多く、まずは規定を確認してください。
